Kaitoy’s blog

中の人は学生。主に政治ネタ、時事ネタ、歴史ネタなどジャンルを問わず自由に書いてます。政治的立場は保守自由主義、大衆主義、反共主義、反知性主義。最近は非マルキストの立場から共産主義を研究しています。皇室をいただく日本の伝統と文化を守りたい。日々が人格陶冶。

現代版ホロコースト、「ウイグル人弾圧」の実態

かつてナチス・ドイツユダヤ人を根絶やしにしようと、多くのユダヤ人を強制収容所に送り込み大量虐殺を行った。ホロコーストによる犠牲者数は正確な資料が存在しないことから諸説があるものの、推定で約580万人とされている。

人類の記憶にはまだ新しいホロコーストだが、我々が今日生きる21世紀に同様のことが、中国共産党によって新疆ウイグル自治区内で行われていることはご存知だろうか。中国国内にはイスラームを信仰するウイグル人のほかにも、チベット人、モンゴル人、満州族回族などの少数民族がいる。その多くが中国共産党により不当な人権弾圧を受けているが、テクノロジーが目まぐるしく進歩するにつれてその度合いは年々増している。今回はウイグル人のあまりに凄惨な実態を共有したいと思う。

新疆ウイグル自治区という場所

f:id:kaitoy_conservative:20200831160059j:plain 東トルキスタン国旗)

新疆ウイグル自治区はもともとは東トルキスタンだが、それはどういう場所か。結論を先に述べると、中共が侵略し奪い取った地域であり、中国の領土ではない。1930年代、「新疆省」では当時「迪化」(てきか)と漢語で命名されていた省都ウルムチに君臨する、金樹仁という漢人主席による苛斂誅求ウイグル人の不満が爆発し、各地で反乱が頻発していた。東トルキスタン南部に位置するシルクロードのオアシス都市であるホタンでは、イスラーム神学校の導師であったムハンマド・イミン・ボグラが武装蜂起に成功し、「ホタン・イスラーム国」の樹立を宣言。その後は東トルキスタン西部のカシュガルを急襲し、1933年11月、ウイグル人カシュガルで(第一次)東トルキスタンイスラーム共和国の独立を宣言した。しかし、ソ連の間接的な支援を受けた中華民国軍閥の侵略により数ヶ月で瓦解する。 その後、日本の敗戦が濃厚になりつつあった1944年、ソ連と国境を接する東トルキスタン北部のクルジャにウイグル人国家の再独立を目指す「クルジャ解放組織」が結成された。この組織は「反漢排漢」をスローガンに掲げていた。同年11月12月に、東トルキスタン共和国の独立を宣言(第二次東トルキスタン共和国)する。つまり、新疆ウイグル自治区として中国の領土に編入されている場所は、「東トルキスタン」と称する歴とした国家があったのである。 しかし国共内戦に勝利した中国共産党が1949年に「中華人民共和国」を建国すると、同年10月に人民解放軍の戦車隊がウルムチに入城し、実効支配下に置いた。その後の度重なるウイグル人独立運動に手を焼いた中共は、1954年に「新疆生産建設兵団」と称した漢人部隊を大量入植させる政策を発動させた。新疆生産建設兵団は平時には経済活動に勤しみ、有事(独立運動など)には武装して鎮圧部隊に豹変する予備役の大集団である。兵団員はそのまま東トルキスタンに定着する者が多く、次々に漢人の労働者も雪崩れ込んだ。この人為的ともいえる大量入植政策の結果、東トルキスタンの人口構成は、1949年時点でウイグル人の比率が80%近くを占め、漢人比率は僅か7%未満だったのが、2000年にはウイグル人の比率が約45%まで低下し、漢人比率が約40%近くまで跳ね上がった。現在も不法占拠の状態は続いるが、中共支配下に置かれたウイグル人の窮状を慮ると胸が張り裂けそうである。

強制収容所と監視

f:id:kaitoy_conservative:20200831160223j:plain BBCからGoogle Image Result for http://c.files.bbci.co.uk/83C9/production/_103373733_p06kv3rv.jpg

現在、新疆ウイグル自治区には複数の強制収容所が建設され、少なくとも100万人が収容されているとされる。しかし2018年5月、ランドール・シュライバー米国防次官補は「おそらく300万人の市民が強制収容所に拘留されている」と述べている。中国当局はキャンプの存在を否定していたが、2017年にジャーナリスト、学者などが衛星写真や目撃証言をもとに秘密施設の存在を指摘すると、当局も「職業訓練センター」として存在を認めざるを得なくなった。だがその実態は決して当局が主張するような「職業訓練センター」などではなく、民族浄化を目的とした明確な「グラーク」である。 キャンプに強制収容されたウイグル人たちは、中国に忠誠を誓うよう中国の国歌斉唱を強要され、イスラム教への信仰や信条を捨てさせるよう「思想改革」や「人格改造」が行われている。食事に関しては、イスラム教徒は豚肉を口にすることは禁じられているが、豚とアルコールの摂取を強要している。また強制収容所に限らず、新疆ウイグル自治区内には監視カメラや顔認証技術・システムを駆使した高度な監視体制が張り巡らされており、自治区内は徹底した監視社会実現のための「実験場」とされている。今ではウイグル人の自宅にまで監視カメラが設置されるなど、自宅までもが「収容所化」している。監視カメラには日本企業の技術や部品が使用されており、米商務省がウイグル人への人権弾圧に加担したとして制裁リストに指定したセンスタイムには、ソフトバンクの子会社が10億ドルも投資している。 かつてナチスソ連政治犯、特定民族、捕虜などを強制収容所に拘留していたが、現在の中国共産党は高度なテクノロジーを駆使し、徹底した「エスニック・クレンジング」(民族浄化)を試みている。 作家の清水ともみ氏は、ウイグル人の証人をもとにマンガでわかりやすく紹介しているので是非一度目を通していただきたい。 清水ともみ|note

強制労働

キャンプに収容されたウイグル人たちは、強制労働に従事させられている。今年3月に発表されたオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の報告書が衝撃的だった。同報告書によると、世界の名だたる大企業83社が、ウイグル人を強制労働させている中国企業および工場と関係があり、その工場が名だたるグローバル企業のサプライチェーンに組み込まれていることを明らかにした。83社にはアディダス、H&M、ラルフローレン、ZARAラコステ、トミー・ヒルフィガーなどのアパレル企業のほか、自動車メーカーのBMWメルセデス・ベンツゼネラル・モーターズがある。日本企業11社(日立、東芝ジャパンディスプレイユニクロ、シャープ、ソニーなど)も含まれている。収容施設を出所したウイグル人は工場で強制的に働かされ、各地の工場にも移送される。中国の国営メディアは、ウイグル人労働者には賃金が支払われていると主張するが、ASPIの研究チームによれば、労働者たちは隔離された宿舎に住み、帰宅は許されていない。勤務時間外には、中国語を学ばされたり、イデオロギーの再教育を受けさせられている。 前述したアパレル企業はその中でも最も強制労働から莫大な利益を得ているとされる。というのも、新疆ウイグル自治区の主要産業は良質な綿花で、世界生産の1/5がここで生産されている。アパレル業界としては、そのような良質な綿花を超ローコストで調達できるので、強制労働の実態を知りながら人権弾圧に平気で加担している。経団連の中西会長は未だに「中国は重要なマーケットで、今も非常に良い関係だ」と言及しているが、中西会長の言う「中国との良好な関係」とは、このような人権無視の強制労働により、安価に原料や部品を調達できることを指しているのだろうか。 少なくとも、上記で列挙した企業は今後一切、「企業倫理」や「企業の社会的責任」(CSR)を語る資格などない。契約関係のある企業の先にあるサプラーチェーンでウイグル人が強制的に働かされているので、企業としては把握しづらいという側面もあるだろうが、そもそも独裁国家の中国とビジネスをするということは、人権弾圧に間接的に加担していると同様である。本来、資本主義というのは倫理観や道徳観がつきものだが、グローバル化の中で無国籍企業と中国が協力することで、「倫理ある資本主義」は単なる「強欲主義」「拝金主義」に陥ってしまった。よって企業は人権弾圧には一切目を瞑り、事なかれ主義を貫こうとしている。ここで私が読者に意識してもらいたいことは、「われわれ消費者も加担している」ということである。「不買運動をしろ」と指図する気は毛頭ない。しかしこれらの企業に人権弾圧をやめさせるよう仕向けるには、われわれがウイグルにおける実態を知ることで、中国の人権侵害に対して声高に批判することが重要だ。

臓器ビジネス

f:id:kaitoy_conservative:20200831162831j:plain カシュガル空港内のグリーン通路 from Google Image Result for http://smgnet.org/wp-content/uploads/2018/10/201810-sapio-kuukou-225x300.jpg

中国では臓器移植の件数が多いことが有名だ。今やアメリカに次ぐ世界第2位の臓器移植大国で、金額も10分の1程度で適合臓器がたった数週間で見つかるという。中国の臓器ビジネスの市場規模は大きく、毎年10億ドルの利益を得ている。しかし「臓器供給源」は依然として不透明である。 通常、適合臓器を発見するには数年を要するが、中国でこれほどにまで迅速に適合臓器を発見できるのは明らかにおかしい。中国当局は「ドナー及び死刑囚の臓器を使用している」と主張しているが、実際には臓器移植件数と死刑囚の数に整合性がなく、臓器移植件数は明らかに死刑囚の数を上回っているのが実情である。2017年の大紀元時報の記事に興味深い内容があった。記事には、2016年に全国人体臓器提供イベントが開催され、ドナー登録者数は2016年3月20日時点で6万6000人で、臓器提供件数は6614件だが、ドナー及び死刑囚からの臓器で年間6万〜10万の移植手術を賄うには数が合わないことが指摘されている。 では年間6万件以上に及ぶ中国における臓器移植手術だが、臓器の供給源は一体どこからきているのかといえば、ウイグル人たちからだ。ウイグル人たちは強制的にドナー登録をさせられ、収容所に拘留されたウイグル人の臓器を勝手に抜き取っている。トゥール・ムハメッド日本ウイグル連盟会長は「現在移植される臓器の最大供給源が、このウイグル地域だと考えられる」としている。上の画像はウイグル人臓器狩りの傍証である。これは自治区内のカシュガル空港にある「グリーン通路」と呼ばれ、矢印の中には「特殊旅客、人体器官運輸通道」と簡体字アラビア文字で書いてある。この「人体器官」とはいうまでもなく「人間の臓器」のことで、ムハメッド氏によれば、カシュガル空港のこの専用通路からウイグル人の臓器が運び出されているという。 収容所内のウイグル人は生きたまま臓器を摘出されるが、まさにこれはウイグル人を家畜として扱い、強制収容所は「人間牧場」の役割を兼任していることになる。ウイグルにおける臓器狩りの実態を詳しく知りたい方は、「世界ウイグル会議」や「日本ウイグル協会」のホームページを一度訪ねてみて欲しい。

ウイグル人権法の成立

f:id:kaitoy_conservative:20200831160942j:plain (マルコ・ルビオ上院議員

新疆ウイグル自治区における強制収容所が明らかになって以降、2018年から米連邦議会が本格的に動き出し、民主党共和党から成る超党派の議員団がウイグル人を弾圧している陳全国新疆自治区書記ら複数の中国政府当局者に制裁を発動するよう追求し始めた。追求の中心人物は、共和党のマルコ・ルビオ上院議員である。特筆すべきことは、中国による一連の人権弾圧に関しては、普段は政治的スタンスが異なる共和党民主党超党派で協力している点だ。無論、民主党が中国に対して強硬的な姿勢を見せ始めたのは、トランプ共和党政権が誕生してからではあるが。 いずれにせよ、今年の5月27日、ついに米議会は「ウイグル人権法案」を可決し、6月17日にトランプ大統領の署名により成立した。同法を根拠に、米国防総省国務省の情報部局がそれぞれウイグルの現状を米議会に報告することで、人権弾圧の加担者リストを提出し、アメリカはウイグル人弾圧を行う当局者へのビザ発給停止や在米資産凍結などの経済制裁を行う。さらにウイグル人弾圧に使用されている監視カメラや顔認証システムに使用される部品や技術など、それらの先端技術が搭載された製品の対中禁輸を行う条項も含まれている。そして7月9日には早速、同法を根拠に陳全国氏を含む中国共産党幹部の4人に対して制裁を科した。 米中冷戦は単なる「貿易戦争」などではない。今やそのバトルフィールドは「人権」という人類の普遍的な価値観にまで及んでいるのだ。

ウイグル人のためにできること

概略的ではあるが、上記で紹介した新疆ウイグル自治区における惨状はほんの一部に過ぎない。だが、日本のメディアは相変わらずウイグル関連のことには言及しないどころか報道すらしない。ましてや日本で普段から「人権派」を自称する政治家、ジャーナリスト、活動家たちもウイグル人のために声を上げることはしない。この記事を読んでウイグル人強制収容所の存在を知った方も多いはずである。かつて連合軍によるナチスの収容所の解放により、初めてホロコーストの全容が世界に明らかとなったが、世界はそれまでホロコーストが実際に行われていることを信じていなかった。同様に、現在も多くの人々は、まさか21世紀の現代においてウイグル人強制収容所に拘留されているとは思ってもいないだろう。 しかし、微力ながらもわれわれ一般国民がウイグル人のためにできることはある。前述したように、消費者でもあるわれわれがウイグル人弾圧の実態を周知し、加担しているとされる企業を非難することだ。さらに中国との結びつきが強い親中派の政治家を選挙で落選させることも一つの手だ。基本的に親中派の政治家は与野党に限らず日本の政界に巣食っている。彼らを政界から一掃しない限り、日本の財界の中国傾斜も止められない。ほかにも、日本ウイグル協会の会員となって同協会の活動を支援する方法がある。関心のある方は是非下記のリンクから会員となって支援をお願いしたい。 ウイグル問題は日本と無関係ではない。

日本ウイグル協会 入会案内 →入会案内 | 日本ウイグル協会

参考文献

関岡英之(2019)『帝国陸軍 知られざる地政学戦略ー見果てぬ「防共回廊」』 祥伝社新書

大紀元時報,2020/05/26,「日本企業11社 中国強制労働に関与か」,〈https://www.epochtimes.jp/p/2020/05/57146.html

Forbes Japan,2020/03/22,「ウイグル人の強制労働に、多くの世界的企業が間接加担か」,〈https://forbesjapan.com/articles/detail/33101