Kaitoy’s blog

中の人は学生。主に政治ネタ、時事ネタ、歴史ネタなどジャンルを問わず自由に書いてます。政治的立場は保守自由主義、大衆主義、反共主義、反知性主義。最近は非マルキストの立場から共産主義を研究しています。皇室をいただく日本の伝統と文化を守りたい。日々が人格陶冶。

武士道の再興

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「武士道」ーーそれは武士がその職業や日常生活において守るべき道だ。ひとことで言えば、武士階級における「ノブレス・オブリージュ(高貴な身分に伴う義務)」のことである。武士は高い身分・地位に置かれたが、その高い身分が故に、民衆に人として守るべき道徳的基準を示し、模範となって導いた。

武士道はなにも武士階級だけに共有された規範や倫理ではない。それは、時が経つにつれて大衆に道徳的基準を提供し、やがては日本人の拠って立つ道徳観・倫理観、そして日本人の国民性の醸成に大きく寄与した。日本人の精神的支柱となった武士道は、極東の島国である日本で、「大和魂」となって開国以降の動乱期を乗り切るための「推進力」になった。 だが、戦後はその武士道も廃れ、今では日本人の魂から武士道の矜恃は忘れ去られた。三島由紀夫がかつて警鐘したように、日本は「からっぽの極東の一経済大国」に“成り下がった“のである。

そんな武士道の精神を蔑ろにした日本人がいま直面しているのは、「利己主義の蔓延」ではないのか。

武士道は「公に奉ずる精神」を説いている。要するに、私心ではなく「公」のために誠意を持って行動する精神だ。「公」という概念は、日本人の心に備わった美徳である。しかし、武士道の精神が抜け落ちた現代人の間には、他人の気持ちを推し量らず、私利私欲にかられた利己主義が蔓延している。これは学校における「いじめ」の横行が良い例だ。生徒のみならず先生ですらも、「自分に害がなければそれでいい」と見て見ぬ振りをする。誰も「弱きを助け強きを挫く」という義侠心を持たず、ひたすら事なかれ主義を貫こうとするが故に、いじめによる自殺を未然に防げない。学校では知識を身につけることばかりに力が注がれ、「心の学問」は軽視されている。心の学問をなおざりにして、自分の心を磨くことを怠るような学校教育で育つ人間は、必ずや品性の面で問題が生じる。

一方で、経済界においても利己主義が跋扈している。自分だけが儲かれば良いという利己主義者や拝金主義者の心には、武士道が教える「正義」「廉直」「義侠」などは微塵たりともない。それを証拠に、日本の財界人はウイグルチベット内モンゴルにおける少数民族に対して激しい人権弾圧を行う中国に手を貸している。数多くの名だたる日本企業が、ウイグルにおける強制労働に間接的に加担しているとも報告されている。一党独裁体制の中国の経済成長に手を貸してきた財界人だが、結局それは日本の安全保障を脅かすほどの軍事大国化を許したばかりか、中国国内の監視・統制をさらに強化させた。これも基本的な道徳と倫理を無視し、利潤追求に猛進した結果だ。 本来、経済活動と道徳は調和しなければならない。自分さえ豊かになれば満足だとして、国家や社会を眼中に置かないというのは嘆かわしいことだ。もちろん、企業家には利益を稼ぐ権利があるが、同時に、その利益の一部を労働者、社会、そして国家のために還元する義務もある。しかし、道理を伴って築かれた富や名声でないのなら、それは本当の意味で成功とは言わないのではないのだろうか。経済界を中心に、穢れた利己主義と拝金主義に腐心する傾向が強まったのは、おそらく、世間一般から人格を磨く習慣が失われてしまったからだろう。現代の資本主義社会に生きる私たちに求められることは、拝金主義を戒め、武士道の精神を基本とした「士魂商才」に回帰することだ。

f:id:kaitoy_conservative:20201117001315j:plain (新渡戸稲造)

物質文明の恩恵を享受してきた現代人だが、それは精神と道徳の進歩を阻害した。精神的支柱を失った現代人は、さまよい、懊悩としているようにも見える。しかし元来、日本人が頼りとしてきた道徳の規範の一つは、やはり武士道である。武士道は、同情する心や気持ち、礼儀やケジメなど、人として踏むべき道と道徳を私たちに教えてくれる。日本人がもう一度、武士道の精神を取り戻すことができれば、社会のことを考えることが大きな流れとなり、自己の利益だけを追求しようとする風潮は無くなるだろう。私自身も、自分勝手に生きてきたが、新渡戸稲造先生の『武士道』に触れることによってその愚かさにようやく気付かされた。それ以降は、人格陶冶(とうや)の日々を送っている。今は世のため、人のため、そして日本という国のために身を粉にして生きていきたい。

今、武士道の再興が求めれている。

現代語訳 武士道 (ちくま新書)

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